熱海市議会 熱海市民クラブ 行政調査
実施日:令和元年11月12日~14日
調査先:①新潟県糸魚川市 調査事項「糸魚川市駅北大火への対応について」
②石川県かほく市 調査事項「定住促進事業の取り組みについて」
参加者:橋本一実、山田治雄
内 容:以下の通り
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①新潟県糸魚川市
令和元年11月12日
糸魚川市役所と火災跡地
調査事項
「糸魚川市駅北大火への対応について」
糸魚川市議会副議長 保坂悟様に歓迎のご挨拶を賜りました。
行政調査の説明につきましては、
復興推進課課長齊藤喜代志様
消防防災課課長・副危機管理監・消防司令竹田健一様
議会事務局長松木靖様
議会事務局主査川原卓巳様
のご対応を賜りました。
糸魚川市の大火は平成28年12月22日午前10時20分頃、市内の中華料理店を火元とした火災が発生し、南からの強風に煽られて中心市街地の約4ヘクタールに延焼する大火災となってしまった。
1.火災発生状況
(1)日時
出火 平成28年12月22日(木)10時20分ごろ
覚知 平成28年12月22日(木)10時28分 119番
鎮圧 平成28年12月22日(木)20時50分
鎮火 平成28年12月23日(金)16時30分
(2)出火場所 糸魚川市大町1丁目2番7号 ラーメン店
(3)出火原因 大型コンロの消し忘れ
(4)焼損棟数 147棟(全焼120棟 半焼5棟 部分焼22棟)
(5)焼失面積 約40,000㎡(被災エリア)
(6)焼損面積 30,213㎡
(7)負傷者 17名 (一般2名 消防団15名)※中等症1人 軽症16名
約300メートルに渡る延焼
2.被災者状況
145世帯 260人 56事業所
3.気象状況
平成28年12月22日(木) 気温:18.4℃ 湿度:54.7%(11時00分)
最大瞬間風速:南南東27.2キロ ※糸魚川市消防本部での観測
4.災害対策設置本部の設置状況
(1)設置日時 平成28年12月22日(木) 13時00分
(2)本部名 糸魚川駅北大火対策本部(本部長:市長)
(3)設置場所 糸魚川市役所203・204会議室
(4)会議開催状況 平成29年6月29日(木)まで38回開催
(同日で解散、復興まちづくり推進本部を新たに設置)
5.避難勧告等の発令状況
【発令】平成28年12月22日(木)
12時22分 本町、大町2丁目 273世帯 586人
16時30分 大町1丁目 90世帯 158人
合計 363世帯 744人 【解除】平成28年12月24日(土)16時00分
6.消化時の体制
(1)消防出動状況
◯平成28年12月22日(木) 消防車等122台 活動人員997人
※新川地域消防本部(富山県)、北アルプス広域消防本部(長野県)
↑応援協定を締結している
◯平成28年12月23日(金)消防車等113台 活動人員890人
◯鎮火までの2日間の合計 消防車等253台 活動人員1,887人
(2)関係機関の協力
陸上自衛隊 車両等42台 人員177人※車両等内訳:車両36台、ヘリ6
北陸地方整備局 車両等 12台 人員105名※車両等内訳:排水ポンプ車4台、
照明車8台
富山県防災ヘリ ヘリ1機 人員 5名
糸魚川警察署 所属 38部署人員515人
⑶民間企業等の協力(残火処理等含む)
建設業関係 業者4社 車両等19台 簡易水槽13基※車両等内訳油圧ショベル8台、その他11台
製造業関係 業者3社 車両等32台 (生コンクリートミキサー車)
給油所関係 業者2社 車両等4台(軽油車2台ほか)
◯災害救助法適用
被災者生活再建支援法の適用
※震災を除く火災としては初めて自然災害の認定を受ける
調査事項
●「糸魚川市駅北大火への対応について」
①大火前の被災地域の建物の構造形態
昭和初期の建物が多く残りレトロなまちなみを形成(鶴来家を除き昭和7年も被災)
その一方で狭い道路沿いに古い木造の建物が密集していた
②被災地とその周辺の大火当時の道路事情
被災地が古くから発展した市街地ということもあり、住宅・店舗混在地の狭隘道路の幅員は2~3メートルほどの市道も多く見られた
③被災地域とその周辺の消化栓の消化設備
被災地周辺(復興まちづくり計画対象地域)の消火栓は22基、防火水槽6槽、自然水利2用水があり大火当日は一部の消火栓を除き使用している。なお設置数は国基準満たしていた
瓦の隙間に飛び火による火の粉と言うより火の玉が入り込み延焼が拡大、消化の水をかけても瓦の下の火が消せなかった、水が足りなくなった
④市内の防災組織はどのように育成されているか
外部講師による防災講習会の開催、出前講座による防災教育、市総合防災訓練や初期消化訓練(消火器・小口径40ミリホース)を実施
また、自主防災組織や地区のリーダー等に対し、毎年1回防災リーダー研修を開催している
自主防災組織
防災士の研修
▲熱海市の防災士も現在何名おり現在どのような活動に対応できるのか把握する必要がある
⑤糸魚川市における過去の大きな火災例はありますか。
今回の大火は昭和7年大火と重なるところが多い
昭和3年、昭和29年にも近隣火災発生
⑥今回の大火の経験を活かした対策はありますか。
大火に負けない消防力の強化(主だったものを記載)
⑴住宅用火災警報器(連動型含む)設置推進
⑵初期消化体制の強化
・40ミリ小口径ホースの配備を開始 H30年度実施264/392箇所(67%)
・防災訓練車両の導入※県内では初
⑶常備消防及び消防団の初動体制の強化
糸魚川消防団市役所分団設立※45歳以下の職員21名で発足(H30.11)
⑷大型防火水槽の設置 にぎわい創出広場200トン 海望公園駐車場100トン
※大火の際、水が実際足りなくなった教訓から防火水槽を整備
⑸海水や用水などの自然水利の活用
⑹本町通における延焼遮断帯の形成
・建築費の一部助成
・沿線の建物について準耐火建築物以上として条例化(H30.1)
・木造建築物が密集する地域における建築物の不燃化に対する支援
⑺防火機能を高める市道の拡幅
・避難や消防救急車両の通行を円滑にするため原則6Mに拡幅※計画8路線完了
⑻防災機能を備えた広場の整備
・8カ所(約2,800㎡)※計画8カ所のうち6カ所完了
⑼延焼の拡大を防ぐ植栽・植樹の促進
⑽雁木再生への支援
(11)地場産材等を活用した復興モデル住宅の推奨、支援
・糸魚川産木材を使用した建築費の一部を助成
(12)雁木のあるまちなみと調和する住宅や店舗の建築促進、支援
(13)道路や歩道の美装化
(14)無電柱化の推進
(15)まちづくりを担う人材育成
(16)医療、福祉や子育てサービスと連携した市営住宅の整備
自己再建を断念された方から入居いただく市営住宅
・18戸分の居室に訪問医療診療所、交流スペースを併設※地元産木材の使用割合57.1% H31.4入居開始
(17)日常生活の支援を行う相談員の配置
(18)生活再建のための金融等の支援
・生活資金借入、住宅再建資金借入に対する利子補給
※多くの義援金が生活支援の下支えとなった(約8億2千万円)
(19)こども消防隊の設置
・隔月の訓練活動や各種催しで活動披露
・防災行政無線による市民への呼びかけ(毎月19日)
(20)ホームページ等による復興情報の発信
・復興ホームページ「HOPE糸魚川」を開設
(21)復興まちづくり版マンホール蓋への更新
⑦被災地の復興計画
糸魚川市駅北復興まちづくり計画策定 2017年8月策定
〜カタイ絆でよみがえる笑顔の街道糸魚川〜
計画策定の目的 復興まちづくりに対する考え方を共有する為の基本方針を示し、復興まちづくりを迅速かつ着実に推進していくこと
◯被災地最優先の観点から重点地域と計画対象地域を設定
◯2021年の5か年とし、3つの段階に分け、復興計画期、復興整備期、復興展開期
◯環境の変化などにより柔軟に見直し
6つの重点プロジェクト
⑴大火に負けない消防力の強化
⑵大火を防ぐまちづくり
⑶糸魚川らしいまちなみ再生
⑷にぎわいのあるまちづくり
⑸暮らしを支えるまちづくり
⑹大火の記録を次世代につなぐ
お話を伺い、実際に消化の際、水が不足してしまった。
今回の大火の教訓を活かし、使いやすい40ミリ小口径ホースの整備を計画
また、大型防火水槽の整備も進めた。コンクリートミキサー車の活躍があった。
2500リットルの折りたたみ式水槽も役だった。
小鍛冶の他県の応援 協定の必要33000㎡が大火の定義だが30,213㎡で自然災害認定されて良かった。
避難勧告には、屋外無線、個別受信器、安心メール(市民の4分の1が登録)の効果が大きい。
がれき撤去は国からの支援を得て被災者負担ゼロの枠組みで実施した。
リノベーションまちづくりでは熱海市に調査に行かせていただいた。
雁木の再建支援も進めた。
消防署と消防団との火災防御活動の連携について
駅北大火後、木造住宅密集地区の火災を想定し、消防署、消防団、警察、自主防災組織や地区住民等の関係機関が連携し、年2回訓練を実施している。
想定訓練では、火災初期段階の住民による通報や初期消化訓練、避難誘導、消防署と消防団による指揮本部活動、風下建物への予備注水や飛び火警戒、ドローン等による高所監視、ミキサー車による給水訓練等を実施している。
糸魚川市大規模火災後、新たに策定した計画等は⑥に主なものを記載、放水要領、飛び火警戒、水利確保や統制、応援要請等を規定している。
日勤者消防隊や市役所分団の設立、消防団出動区分の見直し、第一出動隊を増強するとともに、初動基準に「強風時火災」を追加し、飛び火が起きる確率が特に高いと言われる「平均風速10m/秒以上」の気象状況で火災が発生した際、現場指揮者の指示が無くても隣接消防本部に応援要請するよう改正している。
(まとめ)
熱海市でも大火を過去に経験しているが、糸魚川市でも地域への愛情と情熱で力強く迅速かつ着実に復興を進めていた。
市民の皆さんが復興に対しての意識の共有をしっかり進め、被災地を見させていただいたがかなり整備が進んでいた。
自衛隊をはじめ、国、県、近隣市町や、全国からの義援金の支援も大きく復興を後押ししていた。
今回の説明で、消化の体制も一層強化されているが、燃えない「防火」に対して
延焼遮断帯の形成として、建築費の一部助成や沿線の建物について準耐火建築物以上として条例化など、また、木造建築物が密集する地域における建築物の不燃化に対する支援や防火機能を高める市道の拡幅などは私達の町でも早急に対応したいと感じた。そして、初動基準に「強風時火災」を加え、飛び火が起きる確率が特に高いと言われる「平均風速10m/秒以上」の気象状況で火災が発生した際、現場指揮者の指示が無くても隣接消防本部に応援要請するよう改正している。本市も見習うべき点であると感じた。
いずれにしても、今回の調査で、改めて糸魚川市の取り組みと熱海市の取り組みの比較を進め、改善できる部分は早急に取組みを進めたい。
ご対応いただきました糸魚川市の職員の皆様、関係各位の皆様に心から御礼申し上げ報告と致します。