熱海市議会 明日の熱海(金森和道議員・新野陽平議員)・新政熱海(山田影照議員)・日本共産党(高井一幸議員)と共に熱海市民クラブ私橋本の5名と議会義務局から随行で多田総務室長にもご同行いただき、熊本県菊陽町と福岡県新宮町を視察して参りましたので、要旨についてご報告いたします。
訪問日は令和6年1月17日(水)~1月19日(金)
調査先は、①熊本県菊陽町(きくようまち)(訪問先:菊陽町役場)「人口増加策について」
②福岡県新宮町(しんぐうまち)(訪問場所:新宮中央浄化センター)「先進的なまちづくり都市としての魅力ある土地利用の推進」「中央市街地に位置する“新宮中央浄化センター”」の見学
まず、はじめに、初日の調査をおこなった菊陽町(きくようまち)についてです。
この菊陽町と新宮町につきましては、熱海市とほぼ同等の規模で施策推進によって人口が増えているところを探し、熱海市のヒントになればと考えていたのと同時に、
今までコロナ禍で視察に行くことも、また受け入れていくことも難しい状況のなかでしたが、昨年熱海市議会も選挙があり、新たな体制となったこともあり、今回この4つの会派5名の議員での視察となった次第です。
さて、菊陽町は、今最も注目されている自治体です。
菊陽町は熊本県の中部、熊本市の北東側に隣接し、熊本市の中心部まで約15km程度となっており、鉄道でも20分、バスで約30分で移動できます。
この立地の良さからベッドタウンとして人口が急増しており、特に住宅地「光の森」の分譲が始まってから、町の人口増加率は熊本県内の自治体としては最も高い数値になっています。
また、台湾の半導体企業TSMCの誘致に成功し、今年2月にはTSMC(JASM)新工場の生産開始を控えています。
令和3年11月に世界的半導体不足が続く中、世界最大の半導体受託製造企業、台湾積体電路製造(TSMC)が、菊陽町進出を発表しました。投資額1兆円超、これには日本政府が最大4,760億円の補助をおこなっています。
このTSMCの進出により、菊陽町と周辺自治体への進出を希望する企業が増え、地価の急上昇が起こっていました。
はじめに我々が菊陽町で記念に撮影した場所がこのJASM新工場の前です。
2月にオープンということで、外観のみ見学となりました。半導体の企業ですので簡単には内部視察はできないと思いますが、今回は誘致の背景やその影響(効果成果)などを町の担当の方に伺う機会をいただきました。
菊陽町役場では、総合施策課の塚原康晴様と宗像雄矢様、産業振興部の坂本恒平様にご対応いただきご説明賜りました。
菊陽町と言えば「菊陽にんじん」が、高い品質を評価され有名で全国に出荷されているほか、お菓子や焼酎等の加工品となって親しまれているようです。
工業では、昭和50年代から進めてきたインフラ整備を基盤に、熊本空港、鉄道、高速道路等の交通アクセスの良さや豊富な地下水が評価され最先端企業の誘致に繋がっています。
菊陽町の予算規模は、約215億(令和4年度)自主財源が6、依存財源が4の割合で推移。町税は77億円。固定資産税が39億円。住民税が33億円となっている。都市計画税は課税していない。
町長さんの重点施策として位置づけているふるさと納税は2億7千万円。
財政力指数0.96、TSMCの固定資産税収入が見込まれる令和7年度決算からは1を超えて交付団体となる見込み。地方交付税は約5億5千万、普通交付税はそのうち3億4千万円を計上している。
平成2年度に約20億円だった町税は年々増加傾向、平成17年度と22年度に大きな伸びがあるが、ソニーや富士フイルムの進出の影響となっている。
昭和50年から大きく人口が増加しているが県営住宅(5階建49棟整備)が開発されたのが主な理由となっている。
その後も区画整理事業を菊陽第一第二と、光の森という武蔵ガ丘ニュータウンの3つの大きな区画整備事業が人口増加に結びついている。
TSMCの進出表明後、地価が高騰し、住宅建設はやや鈍化している状況にある。
しかし、賃貸マンションは高層のマンションもかなり多く、こちらの建設は旺盛である。
昨年末の発表の社人研推計では、2050年人口見通しが約46,391人、2020年と比較して7パーセント増という推計が出ている。ちなみに熊本県内で増加している町は、菊陽町と東隣の大津町と合志市、嘉島町の4市町のみ、あとは軒並み人口減少となっている。
菊陽町のまちづくりについて
3村が合併して菊陽町となった。
菊陽町総合計画
菊陽町の将来像の提言が有識者達からあった
1.みどりあふれる生活
2.新しい顔を持つまち
3.活力ある産業を持つまち
4.住民のために住民が手づくりしていくまち
「生活都市」をキーワードにまちづくりを進めてきている。
H字型 Hから田の字型に変わってきている。
菊陽杉並公園の周辺には、現在図書館、温泉物産館、総合体育館が集結している。今後はJR新駅やアーバンスポーツを有した総合運動公園の整備を計画している。
菊陽町の生活都市とは、熊本市の単なるベットタウンではなく、防災機能が整い安全で安心に暮らすことができ、産業経済活動が盛んで、教育文化体育福祉が充実したまちを考えている。言い換えると仕事と生活がここで完結するまちを目指している。
これまで取り組んできた大きな事業は、土地区画整理事業、防災安心安全の対策、企業誘致の推進、子育て支援の推進となる。
これから取り組むものとしては、新たな区画整理事業、TSMC進出等による交通渋滞の対策とJR新駅の設置が挙げられる。
上水道普及率は99.5%、下水道普及率97.8%、道路改良率79.0%、道路舗装率95.8%(R4年度) 基盤整備を優先にまちづくりをおこなっている
熊本地震の経験 震度6強
地域防災力の強化 R5.4総合体育館 防災士の育成 地区防災計画策定支援などをおこなっている
交番の誘致、夜間青色パトロールの実施 防犯灯設置助成
企業誘致の推進に力を入れている
- ソニーセミコンダクタ九州(現ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)の進出
- 町営原水工業団地の開発(平成17年~)
- 第二原水工業団地の開発(平成30年~)
→TSMC(JASM)の進出を呼び込む
そのほかにも
富士フイルム九州(現富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング)、重光産業(熊本ラーメンの老舗の本社)など
子育て支援の推進にも力を入れている
R4.4高校3年生までに拡大 ※熊本県内医療機関は現物支給(県外は償還払い)
給食費・副食費無償化など 町長の公約 令和7年から完全実施 TSMCの税収入る
TSMCの進出による主な影響
○関連企業の進出(町内外)
○人口の更なる増加
○住宅の不足
○交通渋滞の悪化
○外国人の増加
これからのまちづくり(主なもの)
○新たな土地区画整理事業による住環境の整備
○JR新駅の設置
○アーバンスポーツパークを含む総合運動公園の整備
○道路拡張・新設・延長による渋滞解消
○多文化共生の取り組
工業・商業・農業のバランスのとれたまちづくり 駅中心にコンパクトなまちづくり
「成長しつづける町」キーワード
まとめ
菊陽町は、熊本都市計画区域の編入をきっかけに、計画的なまちづくりに着手
骨格は、H字型構想と、リーディングプロジェクト
菊陽バイパスの整備と合せ、乱開発を防ぐため、土地区画整理事業に着手
生活都市の実現を目指し、事業を展開
土地区画整理事業(住環境の整備)
企業誘致(経済・産業の活性化)
防災(安全・安心)
子育て支援(住みよさ)
これら長年の取り組みが人口増加という形で評価されたと考えている
ご説明いただきましたあと、TSMCとの接点はどのようなものがきっかけだったか、地価の推移、固定資産税収の推移など、質疑応答をさせて頂きました。
今回の行政調査にあたり、菊陽町様には大変お忙しい中ご配慮賜りました。限られた時間ではありましたが、人口増加策等のご教示を賜り、今後のわがまち熱海市の施策推進の参考にさせて頂きます。
お世話になり本当にありがとうございました。